抄録
ERCPによる慢性膵炎と膵癌の鑑別上最も問題となったのは,閉塞型(慢性膵炎60例中4例,膵癌54例中29例),狭窄型(慢性膵炎21例,膵癌20例)症例であった.これ等の症例について膵管像を詳細に分析し,更に胆管像,PS試験についてもとりあげ,両疾患鑑別上の有用性を検討した.膵管像のうち狭窄部より乳頭側の膵管には,慢性膵炎で88%と,高率に異常所見がみられたのに比べ,膵癌,特に体尾部癌では有所見率が低く,しかも比較的軽度の変化がほとんどであった.断端不整な閉塞像,狭窄部前後の連続性が不明瞭な高度の狭窄像は膵癌に特徴的であったが,くびれ状狭窄,しめつけ状狭窄は両疾患ともにみとめられた.狭窄部より尾側の膵管には高率に拡張を主とした異常所見がみとめられたが,両疾患の間で明らかな差はなく,前2者に比べて鑑別上の有用性は低いと思われた.膵部総胆管の閉塞像,不整狭窄像は膵癌にのみみられ,重要な鑑別点といえた.PS試験の成績は尾部狭窄例以外では両疾患の間で差がなく,鑑別上の有用性は低かった.