日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
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早期十二指腸癌の一例
海藤 勇山岡 豊佐藤 正伸狩野 敦佐佐藤 邦夫金 俊夫遠藤 尚和武藤 純一山下 純一加藤 泰之増山 仁徳籏福 哲彦飯島 仁
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1979 年 21 巻 6 号 p. 729-737

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抄録
患者は64歳女性,上腹部違和感,貧血を主訴として来院.胃・十二指腸X線検査にてVater乳頭部付近より水平脚,Treitz靱帯にかけてKerckringと直角に縦走する7~8条の粘膜ヒダがみられた.その肛門側端には直径4cmの桑実状の腫瘤陰影が存在した.内視鏡では乳頭部付近に起始部をもち,頭部が水平脚にある有一プの茎性ポリープであった.ポリープの表面は粗大顆粒状で発赤が強く,イチゴ状外観を呈していた.開腹してポリみの切除を行なった.組織学的には腫瘤の大部分は腺腫よりなっていたが,その一部に腺癌組織を認めるCancerin adenomaであった.癌巣は粘膜下層には浸潤することなく,原発性早期十二指腸癌であった.患者は術後1年目の現在健康である.腺腫の一部に癌巣を有する本症例は,腺腫の癌化を考察するうえで貴重な症例と思われる.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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