我々は最近,一卵性双生児の兄弟に相次いて胃癌を発見し,部位,形状および組織型の類似性が高い興味ある症例を経験した. 症例1は,45歳男性で,空腹時心窩部痛を主訴とし,て来院し,胃X線検査および胃内視鏡検査で胃体下部小彎に浅い陥凹性病変を認め,IIc型早期胃癌と診断した.切除標本の検討では,2.0×1.7cmの一部Pm浸潤のみられたIIc様進行癌で,陥凹中心部は印環細胞癌,辺縁部は高分化型腺癌であった. 症例2は,症例1の双生児の兄であり,43歳の時,胃集団検診で異常を指摘され,精査の結果,胃角小彎のIIc+III型早期胃癌と診断した,切除標本の検討では,2.0×2.0cmのIIc+III型早期胃癌で,sm浸潤がみられ,陥凹中央部は中分化型腺癌,辺縁部は高分化型腺癌であった. 文献的に,一卵性双生児の双方に胃癌が発生したとする報告は,調べ得た限りでは外国文献で6例のみであり,本例は本邦第1例目である.
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