抄録
III 型早期胃癌は,臨床的にはきわめて診断のむずかしい早期胃癌である.われわれの症例は,症例に示したように臨床上,III型早期胃癌と診断できなかった症例であるが,retrospectiveにみれば,III型早期胃癌であると解釈してよいと思われる症例である.III型は,頻度のうえからは,ひじょうにまれな早期胃癌であるが,分類および診断のうえからはきわめて多くの問題点を残した,いわば幻の早期胃癌型であるということができる.III型早期胃癌は,III+IIb型早期胃癌と解釈できることより,その診断はつきるところII型の診断いかんにかかっていると思われるが,現状ではIIb診断の困難性を考え,III型の理論上の存在に注目し,いわば類似III型早期胃癌,すなわちIII+()型を想定し,III型の診断に留意することが必要であると考える.