日本消化器内視鏡学会雑誌
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21 巻, 9 号
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  • ―細胞核DNAと二糖類分解酵素の検討―
    桑山 肇
    1979 年 21 巻 9 号 p. 1025-1038_1
    発行日: 1979/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    腸上皮化生をともなう各種胃疾患および正常小腸について顕微螢光測光法による細胞核DNA定量とDahlqvist法による二糖類分解酵素定量を行ない,両者より胃粘膜の腸上皮化生について検討した.その結果,DNA上は正常小腸粘膜,正常胃粘膜は全くの2倍体集団であるのに比べ,腸上皮化生胃粘膜ではhyper diploidの状態にある.酵素活性は原則的に組織学的な化生の程度と相関したが,化生の程度が高度でも酵素活性の低いものを認め多彩性を示した.しかしそのDNA定量では特に,細胞動態がより活発であるという結果は得ず,このことはこれらの腸上皮化生胃粘膜が即,未分化の状態にあるというよりむしろ分化のverietyの幅と考えられた.しかし,その発生,進行過程における本来の個有胃腺との二重回転状態での発癌は否定しえず,胃癌の発生母地としての存在価値についてはさらに検討を重ねるべきとした.
  • 河原 清博
    1979 年 21 巻 9 号 p. 1041-1057_1
    発行日: 1979/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     当教室で1968年から1978年の間に経験した早期胃癌138例,早期胃癌類似進行癌45例について,深達度診断,分類上の問題点,癌の所属腺域別特徴の面から検討を加え,つぎのような結論をえた. (1) 早期胃癌類似進行癌の深達度診断において,癌がpmより深く浸潤しているか否かを決定する特異的診断指標はなく,今まで使われている深達度診断指標もsm浸潤の有無を示すものでしかない.しかし,既存の深達度診断指標の量的差異と多彩性とを総合的に判断すれば,72.5%の深達度診断正診率がえられる. (2) 早期胃癌IIa+IIc型,IIc+IIa型症例の肉眼分類と内視鏡分類とを対比した結果,その分類上のくいちがいの原因として,病巣が小さいこと,IIc辺縁の隆起が癌であるか否かの判定が困難であることがあげられた.前者の問題は,メジャー鉗子の使用,後者は直視下生検法の併用により是正されると考える. (3) 早期胃癌の所属腺域別頻度は,幽門腺領域の癌が76.8%ともっとも多く,ついで境界腺領域の癌13.8%,胃底線領域の癌9.4%であった.胃底腺領域においては13例中13例(100%)とそのすべてが未分化型癌であり,幽門腺領域においては106例中87例(82.1%)と大部分が分化型癌であった.慢性胃炎のうち,萎縮性変化の少ない症例に未分化型癌が多く,萎縮性変化の進んだ症例に分化型癌が多いことから,粘膜の萎縮と発癌(とくに分化型癌)の間に深い関連があることが示唆された. さらに,微小胃癌44病変について,主として内視鏡診断の面から検討を行った.その結果,内視鏡による存在診断は79.5%に正しく行われており,存在診断不能例はなんらかの合併症を有する副病変として術後に発見されたものであった.また,内視鏡的に診断可能な微小胃癌の病巣長径は4mmであった. 内視鏡による質的診断は85.7%に正しくおこなわれ,直視下生検を併用することにより,その正診率は向上した.直視下生検の癌陽性率は94.3%と良好であった. 今後,微小胃癌診断の進歩のために,拡大内視鏡の改良,色素内視鏡検査法の応用が必要であると考えた.
  • ―上部消化管出血の臨床と緊急内視鏡検査の意義を中心として―
    綿引 元, 中野 哲, 北村 公男, 武田 功, 井本 正巳, 小沢 洋, 熊田 卓
    1979 年 21 巻 9 号 p. 1058-1065
    発行日: 1979/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     われわれは,地域医療を担う第一線病院として救急医療体制を確立し,その中に緊急内視鏡検査も位置づけている.今回,救急医療の立場から上部消化管出血について臨床的検討を加えた.症例は過去5年間に救急外来を受診し入院した425例で,そのうち198例に緊急内視鏡検査を施行し,さらに早期内視鏡検査.早期X線検査等を行い,96.2%に出血源の確認ができた.なお,緊急内視鏡検査の正診率は94.9%であった. 上部消化管出血の外科的治療は,28.9%に行い,その半数に緊急手術が行われた.なお,緊急手術例の約90%は胃潰瘍であった.死亡率は,5.9%であり,特に消化性潰瘍にかぎると.わずか0.3%にすぎなかった. このように緊急内視鏡検査を中心とした積極的な出血源の探索は,上部消化管出血に対する早期手術等の適切な治療方針の決定に役立つものである.
  • 高瀬 靖広, 折居 和雄, 竹島 徹, 尾崎 梓, 深尾 立, 岩崎 洋治, 宮本 二郎, 福富 久之, 崎田 隆夫
    1979 年 21 巻 9 号 p. 1066-1070
    発行日: 1979/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道静脈瘤の静脈圧(食道静脈瘤圧)を測定することが可能であれば,食道静脈瘤の臨床像ならびに病態を理解する上に有用であると思われる. そこでわれわれは,われわれが行なっている内視鏡的食道静脈瘤治療法の手技をもちいて,食道静脈瘤圧測定を試みた.すなわち,直視下に食道静脈瘤に穿刺針を刺入し,穿刺針の一方の端にGould-Statham製トランスデューサーP23IDを接続して圧測定を行ない,三栄測器製Recorder 120 Systemにて記録した.その結果,高度食道静脈瘤症例2例について食道静脈瘤圧を連続的に記録することに成功した.現在,食道静脈瘤の内視鏡的治病法は手技的に困難ではないので,食道静脈瘤圧測定をまた同様に安全に行ないうるものと考えられる.
  • 播磨 一雄, 有山 重美, 前谷 昇, 河村 奨, 竹本 忠良
    1979 年 21 巻 9 号 p. 1071-1077_1
    発行日: 1979/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     III 型早期胃癌は,臨床的にはきわめて診断のむずかしい早期胃癌である.われわれの症例は,症例に示したように臨床上,III型早期胃癌と診断できなかった症例であるが,retrospectiveにみれば,III型早期胃癌であると解釈してよいと思われる症例である.III型は,頻度のうえからは,ひじょうにまれな早期胃癌であるが,分類および診断のうえからはきわめて多くの問題点を残した,いわば幻の早期胃癌型であるということができる.III型早期胃癌は,III+IIb型早期胃癌と解釈できることより,その診断はつきるところII型の診断いかんにかかっていると思われるが,現状ではIIb診断の困難性を考え,III型の理論上の存在に注目し,いわば類似III型早期胃癌,すなわちIII+()型を想定し,III型の診断に留意することが必要であると考える.
  • 牧山 和也, 三島 致衍, 橘川 桂三, 今村 和之, 川尻 頌洋, 谷岡 一, 原 耕平, 中村 彬
    1979 年 21 巻 9 号 p. 1078-1085
    発行日: 1979/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     Vascular spiderはpalmar erythemaとともに肝硬変と最も相関の高い徴候の1つであり,出現する部位は上大静脈流域の前胸部,頸部,肩甲部の皮膚に好発し,上肢,背部,顔面にもしばしば認められ,稀れに鼻腔,口腔,咽頭部などの粘膜にも認められ,上半身に限って発生するとする考えが大半である.しかし,直腸粘膜にもかなりの頻度で,皮膚にみられるvascular spiderに酷似した毛細血管拡張所見が存在することを認めた.これをrectal vascular spiderと呼び,肝硬変28例,肝線維症を伴ったCRST症候群1例,慢性肝炎7例の直腸粘膜を観察した.その結果,肝硬変28例中9例の32.1%にrectal vascular spiderの存在を確認した.大きさは約1.5mm~2.0mmで,拡大内視鏡(FCS-MLII,MACHIDA)でその形態を詳しく観察した.型状ではspider typeとnon-spider typeに分けることができた.これらは皮膚にみられるvascular spiderとはほぼ平行して認められるようであったが,palmar erythema, hepatomaとの関係においては特に関連性は認められなかった.また尿中エストロゼン値との関係も有意でなかった. Rectal vascular spiderが大量出血の原因とは考えられず,臨床的意義はこれから解明されるであろう.
  • 三嶋 孝, 奥田 茂, 大島 明, 宋 桂子, 平岡 力
    1979 年 21 巻 9 号 p. 1086-1093_1
    発行日: 1979/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     早期胃癌を放置した場合どの位の時間でどのような進行癌に発育するかを知ることは重要なことであり,従来retrospective studyを中心に検討されてきた.しかしこの方法は初期変化が癌であるとの組織学的裏付けを欠いているためあくまで推定の域をでないといわざるを得ない.本研究は生検で癌と診断され,レ線,内視鏡で早期と推定されながら何らかの理由で6ヵ月以上経過が追跡された症例を収集し,早期胃癌から進行癌への発育進展をprospectiveに検討したもので次の結果を得た.(1)早期から進行への進展に要する時間をKaplan,Meierの方法で算出したところ36ヵ月を要することが推定された.(2)早期から進行への進展に伴う病型変化として次のコースを確認できた.(1)IIc ul(-)→Borr.II.(2)IIc ul(+)→Borr.III.(3)IIc+III→Borr.III.(4)III+IIc→Borr.III.(5)IIa→Borr.II.(6)I.IIc ul(-)→Borr.I
  • ―アンケートによる家系調査―
    谷口 友章, 野口 友義, 長谷川 かをり, 三輪 洋子, 佐々木 宏晃, 長廻 紘
    1979 年 21 巻 9 号 p. 1094-1101
    発行日: 1979/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     消化器病センターにおいて,過去10年間に潰瘍性大腸炎と診断した116例中,家族内発生が3家系,6人,約2.6%にみられた.3組とも同居中の母子あるいは父子に,2~5年の間隔で発症している.血族結婚はみられなかった.2組では病変部は全大腸に及んでいた. 全症例に家族調査を行い,107名中,65名,約60%に回答を得た.家族に潰瘍性大腸炎の確診例は得られなかったが,原因不明の粘血便症状を4名の家族,6.1%にみられた. 家族内発生のみられた第1組について,HLAタイピングを行った.遺伝因子の関与に関して,HLA抗原系からの研究も重要である.
  • 多田 正大, 陶山 芳一, 清水 忠雄, 稲富 五十雄, 藤井 浩, 三好 正人, 西村 伸治, 西谷 定一, 鹿嶽 研, 赤坂 裕三, 川 ...
    1979 年 21 巻 9 号 p. 1102-1110
    発行日: 1979/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     大腸ファイバースコープ(CF)の機構・性能の向上と挿入手技の熟練によって,今日では全大腸の内視鏡観察が確実に,かつ容易に行えるようになってきている.しかしそれでもなおCFを挿入する際に被験者の苦痛は決して少ないものではないのが実情である.理想的なCFの条件の1つとして,挿入しやすいことも重要であるが,被験者に対する苦痛が少ないことも大切な条件である.そこでこれらの諸条件を満す理想的なCFの開発を目的に,特にその蛇管部の太さの点について検討を行った. その結果,現在市販されているCF-IBよりもさらに細い径のCF-Pを用いた場合,回盲部への挿入率は80%にとどまったものの,被験者の苦痛の点ではCF-IBや太い径のCF-Tよりもはるかに優れていた. したがって今日の大腸内視鏡検査に際しての被験者の苦痛が決して少なくないことを考慮すると,理想的なCFの機構として,CF-IBの諸性能を犠牲にしない範囲で,蛇管部についてはできるだけ細くすることが望ましい.と考えられた.
  • 森下 鉄夫, 安見 敏彦, 益頭 尚道, 朝倉 均, 土屋 雅春
    1979 年 21 巻 9 号 p. 1111-1116_1
    発行日: 1979/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は27歳女性.腹痛と1日2~3回の水様下痢にてAB-Pc1gを投与され,腹痛・下痢は一時消失したが7日目より再び1日7~8回の粘血下痢便・下腹部痛出現し入院入院時便培養検査にて黄色ブドウ球菌が検出された.入院2日目の大腸内視鏡検査では直腸・S状結腸下部に著変なく,肛門より30cmのS状結腸から上行結腸中部までの粘膜は浮腫状で発赤がびまん性に存在し,びらんや浅い潰瘍が散在していた.上行結腸口側部・回盲部には著明な発赤がみられた.生検所見でもびらん・小円形細胞浸潤が認められ,杯細胞は減少していたがcrypt abscessや好酸球浸潤はみられなかった.NA内服,PSL注腸・補液などにて入院4日目には症状消失し,便培養も陰性化した.入院12日後の注腸X線検査では著変なかった.菌交代性ブドウ球菌腸炎は激症化・致死をきたすこともあり,今後抗生物質の使用増加とともに頻発すると思われる腸炎であるが,急性期に大腸全体の内視鏡的検索をした報告例は極めて少なく,下痢の機序解明に意義あると考え報告した.
  • ―内視鏡所見を中心に―
    斉藤 征史, 加藤 俊幸, 丹羽 正之, 小越 和栄
    1979 年 21 巻 9 号 p. 1119-1126_1
    発行日: 1979/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    過去3年間に抗生物質が原因と考えられる急性腸炎3症例を経験した.起因抗生物質はAmpicillin(2例)とPenicillin G(1例)であった.全症例1日数行の血性下痢,下腹部痛,37℃台の微熱で発病した.血液検査で好酸球増多が3例中2例(症例1と2)にみられ,病因としてアレルギー的機序の関与を疑わせた.大腸内視鏡検査では散在性の小出血,易出血性,小充血,樹枝状血管像の不鮮明化と消失が全症例にみられ,さらに1例(症例3)には約3mmの白色模様物の附着が散在性にみられた.病変部位は左側結腸に限局し,直腸は内視鏡像や生検組織像で全く異常所見はなかった.起因抗生物質を中止し,対症療法を行なった.しかし1例(症例1)は経過中にSalazosulfapyridineを併用した.全症例とも臨床経過は良好で発病15日以内に内視鏡像も正常化した.
  • 1979 年 21 巻 9 号 p. 1127-1138
    発行日: 1979/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 1979 年 21 巻 9 号 p. 1139-1153
    発行日: 1979/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 1979 年 21 巻 9 号 p. 1155
    発行日: 1979年
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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