抄録
膵管,胆管の合流異常には種々の型が知られているが,腹側原基由来の主膵管の欠如する症例は極めて稀である.最近,背側膵原基由来の膵管が数本の吻合枝で総胆管に交通し胆管炎をくり返していた1症例を経験:した. 症例は39歳女性.29歳の頃より右季肋部痛と発熱をくり返し症状の増強を認めた.点滴胆のう造影では特に異常を指摘し得ず,内視鏡にて十二指腸下行脚に膵管の開口部を水平脚に総胆管の開口部を認めた.cine-ERCPにて膵管と総胆管が交叉し数本の小吻合枝により交通する合流異常の像を認めた.胆のう切除とRouxen-Y法による肝管空腸吻合術を行なった.手術時総胆管内胆汁より19,200Somogi Unitの高アミラーゼと細菌を検出した.組織学的に慢性胆管炎を認めたが,膵炎を認めず,胆石や胆管のう腫も認めなかった.本症例をcine-ERCPによる膵管胆管合流型式の分類上,異常交叉型と名付けた.