抄録
著者らは富山医科薬科大学附属病院開院以来,先天性膵体尾部欠損症1例,膵管癒合不全3例を経験した.これらの膵管造影上短小膵管を示す膵管形成異常症例の非手術的診断基準を確立する目的で,同期間に経験した主膵管短小を示す膵癌症例を対照としてその膵管像および諸検査所見につき比較検討した.膵管形成異常による短小膵管像と膵癌による主膵管中断像とは,主膵管断裂所見の有無,分枝不整の有無等により明確に鑑別が可能であった.膵管癒合不全症例の確診には副乳頭から背側膵管を造影することが不可欠であるが,自験例では全例に成功した.膵体尾部欠損症の診断には他の画像診断法の併用が必要であったが,特に腹部血管造影とCTスキャンが診断上有用であった.膵管形成異常の鑑別診断は膵管像の詳細な読影と他の画像診断の併用により,ほとんどの場合非手術的になし得るものであると考えられた.