日本消化器内視鏡学会雑誌
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腸重積を起し大量下血を来たした空腸脂肪腫の1例
村田 育夫林田 研司小森 宗治井手 孝田中 義人牧山 和也原 耕平原口 増穂中村 憲章石井 俊世三浦 敏夫
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1986 年 28 巻 11 号 p. 2610-2615_1

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抄録
 腸重積による大量出血にて発症した空腸脂肪腫の1手術例を経験したので報告した.小腸良性腫瘍はまれな疾患で,イレウスや出血などで外科的に緊急手術を受けることが多く,また現在の段階では小腸内視鏡検査が一般的には普及していないため,内視鏡的に見出される例も極めて少ない.本例は,術前に小腸造影,小腸内視鏡検査,血管造影などを行ったものの,確診は困難であった.症例は66歳女性で,本院に入院するまで強度の貧血を来す大量下血,腹痛,嘔吐のエピソードが2回みられた.小腸造影ならびに小腸内視鏡では,Treitz靱帯より約25cmの空腸に,表面平滑で可動性のある類円形の粘膜下腫瘍が認められ,表面に出血びらんを伴っていた.血管造影では腫瘍の周縁部に軽度の血管増生がみられた.手術時には小腸重積の状態で,術前の症状も反復性腸重積症によるものと考えられた.小腸脂肪腫の内視鏡および血管造影の施行例は極めてまれであり,これらの所見について若干の文献的考察を加えて報告した.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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