日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡的食道静脈瘤硬化術後の合併症の検討
澁谷 誠一郎今井 寛途真鍋 良二浜津 和雄重見 公平寺坂 隆石井 正則
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1986 年 28 巻 8 号 p. 1813-1821

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抄録

 食道静脈瘤に対して内視鏡的に薬剤を注入し,静脈瘤の改善をはかる治療法は緊急吐血例,待期例を問わず,その有効性が評価されつつある.近年の内視鏡的食道静脈瘤治療の普及に伴い,施設間にて手段,予後及び合併症に対する検討がすすめられてきている.われわれは内視鏡検査にて,第12回,門脈圧亢進症研究会における食道静脈瘤内視鏡所見記載基準に従い,F2以上,RCサインのみられた症例30例について,延べ53回の内視鏡的食道静脈瘤硬化療法(以下,硬化療法と略す)を旋行した.症例別にみた施行回数は,3回硬化療法施行例6例,2回施行例10例,1回のみ施行した症例は15例であった.30例のうち10例は出血あるいは漏出性出血がみられたため緊急硬化療法を施行した例であり,20例は待期的に硬化療法を行った.硬化療法を施行した30例のうち硬化療法が直接死亡に関係していると考えられるのは2例で,そのうち1例は再出血後,肝不全で死亡,他の1例はルポイド肝炎による肝硬変症で加療中の53歳女性,ステロイド投与中であったが,硬化療法後,30日後に食道胸膜瘻を形成し肝不全で死亡した.その他の合併症としては,2例に肺梗塞がみられ,また30例中22例に穿刺部位の潰瘍形成をみとめた.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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