抄録
癌巣内潰瘍を有する陥凹性胃癌は潰瘍の消長に伴いその陥凹面形態の変化を観察できることから,陥凹面形態が深部浸潤癌量の指標となり得るかを検討した.対象は教室で切除された癌巣内潰瘍あるいは瘢痕を有する陥凹性胃癌33例で,陥凹性早期胃癌14例,早期胃癌類似進行癌4例,Borrmann型進行癌15例である.これらを内視鏡所見,切除胃肉眼所見,病理組織学的所見と対比し,癌巣陥凹面の性状と浸潤癌量との相関を検討した.その結果,顆粒像を主体とする陥凹面は主に粘膜癌(m癌)の所見と判断でき,陥凹面形態が不整顆粒→結節→粗大結節→無構造と粗となるに従い深部浸潤癌量も増す傾向にあり,Borrmann型進行癌の陥凹面形態は全例粗大結節,無構造を示した.この傾向を癌巣表層の病理組織所見と対比すると,粘膜癌(m癌)の陥凹面の病理組織学的所見は悪性サイクルでいう地層型,全層型,聖域型で占められ,粘膜下層以下多量浸潤例および進行癌例ではそれらの出現の程度はごく弱かった.以上,陥凹性胃癌の癌巣内潰瘍の消長(悪性サイクル)と癌巣陥凹面の形態は密接な関連を有すと推察された.