抄録
直腸カルチノイド12例の臨床病理学的検討を行い,内視鏡的ポリペクトミーの有用性および適応につき文献例を加え検討した.対象の平均年齢は46.8歳.腫瘍の肉眼型は無茎性が9例(75%)と多く,表面平滑,黄色調が特徴であった.腫瘍径は10mm以下が9例(75%)であった.深達度は2例(17%)で筋層浸潤をみた他は,粘膜下層までであった.腫瘍径10mm以下で筋層以下への浸潤,遠隔転移は認めなかった.治療は内視鏡的ポリペクトミー4例,局所切除7例,根治的腸切除1例であった.文献例を加えたポリペクトミー39例中31例(79%)の腫瘍径は10mm以下であり,切除断端陽性は16/26例であったが,経過観察中に腫瘍組織の遺残を確認し得たのは大きさが15mmの1例のみであった.以上より腫瘍径10mm以下の直腸カルチノイドにおいては,内視鏡的ポリペクトミーが以後の治療方針を決めるうえで有用であると思われた.