1990 年 32 巻 11 号 p. 2627-2631_1
内視鏡的に十二指腸球部腫瘤が存在し,静脈瘤を証明しえた肝外門脈閉塞症の1例を報告した. 症例は25歳男.腹痛のため近医を受診,各種検査にて食道静脈瘤,脾腫を指摘され,精査のため当科入院となった.腹水,黄疸なく,血液検査上肝障害を認めなかった.上部消化管内視鏡ではCBF3LSRC(+)Lg(+)の静脈瘤があり,十二指腸球部には前上壁から内腔に向かって大きく卵円形に突出する弾性軟の腫瘤が見られた.腹部超音波検査で,肝門部に著しく拡張,蛇行した血管が見られた事から,十二指腸球部静脈瘤と考え門脈造影を施行した.門脈は肝門部で閉塞し,この部を迂回して拡張,蛇行した求肝性側副血行路が肝臓に流入していた.十二指腸球部静脈瘤は本例のように求肝性側副血行路によるものが多く,原疾患としては肝外門脈閉塞症が重要である.十二指腸球部腫瘤の鑑別診断においては,本症も念頭におき,要すれば門脈系の精査を行うべきである.