抄録
症例は68歳,女性.間欠的な黒色便を主訴とし,徐々に進行する貧血を繰り返した.1回目の上部内視鏡検査では病変を指摘できなかったが,2回目に十二指腸第II部後壁側から漏出性の出血を認め,同部位にほぼ円形の境界明瞭な5mm前後の強い発赤斑を認め,出血性vascular ectasiaと診断した.出血が続くためエタノール局注を行い止血を得,3カ月後には消失した.6カ月後の内視鏡検査でも再発は認めず,貧血も増強していない.報告例(出血例)をもとに内視鏡所見を以下の3型に分類した.(1)平坦で樹枝状に広がる毛細血管拡張,(2)平坦あるいはやや隆起した境界明瞭な円形,星状の発赤斑,(3)隆起の頂点に陥凹,発赤を有する粘膜下腫瘍,本例は(2)型に属し,最も多い型であった.また,十二指腸の本邦報告例は少なく,本例が4例目であった.本例は10年来の皮膚筋炎を伴っていたが,本症との関連は不明で,動脈硬化性変化に基ずくものではと考えた.また,本症に対する止血法としてエタノール局注は非常に有効と思われた. 高齢化社会が進むにつれ,本症が増加するものと考えられ,今後,消化管出血の原因検索の際には常に本症を念頭において行うことが必要と考えられた.