日本消化器内視鏡学会雑誌
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上中部食道潰瘍の臨床的検討―剥離性食道炎本邦50例の検討を含めて―
石井 圭太三橋 利温今泉 弘内藤 吉隆芦原 毅大井田 正人安海 義曜西元寺 克禮
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1992 年 34 巻 2 号 p. 363-371_1

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抄録

 過去10年間に当科にて経験した上中部食道潰瘍31例につき検討した.平均年齢は,42.1歳と下部食道潰瘍症例(平均58.5歳)に比し,比較的若年者に多く,男15例,女16例と性差は認めなかった.原因の明らかなものは17例で,薬剤によるものが12例と多く,その他,異物,放射線治療,飲食物および扁平苔癬によるものを認めたが,原因が不明のものも14例みられた.症状は,胸骨後部痛,つかえ感,嚥下痛が多かった.潰瘍の性状は,不整形,略円形,剥離型の3つに分類できた.不整形と略円形が,大半を占め,剥離型は4例のみであった.症状消失期間および内視鏡的治癒期間を比較すると,不整形と略円形では,ほとんど差を認めないのに対し,剥離型は早期に治癒する傾向を認めた.このように剥離型は,その特徴的な形態はもちろんのこと臨床経過においても,不整形及び略円形とは明らかに異なり,これは剥離型では病変がより表層にあるためと思われた.剥離型とした症例は,いわゆる剥離性食道炎の範疇に入るもので,本邦における剥離性食道炎50例につき併せて検討した.なお,同期間に経験した下部食道潰瘍130例との比較も行った.

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