抄録
EIS施行歴を有する2症例に,腸管壊死を伴う広範な門脈血栓症の出現を経験した.症例1は,62歳,女性.予防的適応にて第1回EISを施行.6カ月後に腹部CT,超音波検査にて門脈本幹に壁在血栓を認めていた.2年6カ月後,増悪した食道静脈瘤に対し,第2回EISを施行.1週間後より腹痛出現,腹部レントゲン所見などより虚血性腸炎によるイレウスとして加療するも,3週後に死亡した.剖検では,門脈本幹から上腸間膜静脈に及ぶ血栓と小腸全体の出血性梗塞を認めた.門脈内には陳旧性血栓に加え,新鮮な血栓が広範に認められた.症例2は60歳,男性.昭和62年1月,食道静脈瘤破裂の後,待期的適応にてEISを施行した.約1年半後,下痢による脱水,発熱を契機に腹痛が出現,イレウスとして加療を行ったが2週間後死亡した.剖検では門脈本幹から上腸管膜静脈末梢にいたる新鮮な血栓を認め,腸管は出血性梗塞に陥っていた.両者における広範な門脈血栓の出現にはEISによる血行動態の変化などの関与が示唆された.