抄録
症例は57歳,女性.既往歴:昭和60年8月子宮頚癌第IIb期で拡大子宮全摘術を受け,術後放射線及び化学療法を受けた.現病歴:平成2年9月悪心・嘔吐を主訴に入院.腹部は臍上部に5cm×7cmの腫瘤を触知した.小腸造影検査では,十二指腸水平部で完全閉塞部位を認め,内視鏡検査でも同部に全周性の表面ビロード状の腫瘤を認めたが,レントゲン,内視鏡像からは原発性癌か転移性癌かの診断が困難であった.生検組織は扁平上皮癌であった.腹部US,CT検査の結果,骨盤腔内には異常を認めなかったが,SMA分岐部より遠位に大動脈を巻き込んだ腫瘤を認め,開腹にても同腫瘤が確かめられた.5年2カ月前の子宮頚癌の傍大動脈リンパ節転移による腫瘤が,十二指腸水平部を閉塞した稀な症例を経験し,原発性,転移性十二指腸癌の鑑別診断を中心に文献的に考察して報告した.