日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
大腸癌の内視鏡治療
―その適応と限界をめぐって―
多田 正大
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 39 巻 10 号 p. 1745-1752

詳細
抄録

 大腸腫瘍に対する内視鏡治療の歴史的背景と現況を基礎に,改めてその適応と限界について概説した.今日行われている内視鏡治療の大半は高周波電流を用いた切除法(ポリペクトミー,粘膜切除術)であるが,手技の向上によって,従来まで適応外であった表面型腫瘍や広基性の大きい腫瘍の治療も可能となり,限界は取り除かれ適応は拡大されている.その一方で,かっては形態的に切除可能な病変はすべて切除することを原則としたが,最近では内視鏡治療がover treatment,またinsufficient treatmentにならないよう,適応を厳格に考える機運が生まれている.それだけに大腸腫瘍の性状診断と深達度診断が重要であり,改めて内視鏡診断学の質が問われている.内視鏡治療に伴って発生する偶発症を予防・治療するための処置具の開発も目覚しく,より安全な治療が可能になるとともに,・適応の拡大にも貢献している.その結果,わが国では患者のQOLのうえからも,望ましい治療が行われていると評価できるが,それでも現状に満足することなく,更に良い手技の開発に努めなければならないことを強調した.

著者関連情報
© 社団法人日本消化器内視鏡学会
次の記事
feedback
Top