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―その適応と限界をめぐって―
多田 正大
1997 年 39 巻 10 号 p.
1745-1752
発行日: 1997/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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大腸腫瘍に対する内視鏡治療の歴史的背景と現況を基礎に,改めてその適応と限界について概説した.今日行われている内視鏡治療の大半は高周波電流を用いた切除法(ポリペクトミー,粘膜切除術)であるが,手技の向上によって,従来まで適応外であった表面型腫瘍や広基性の大きい腫瘍の治療も可能となり,限界は取り除かれ適応は拡大されている.その一方で,かっては形態的に切除可能な病変はすべて切除することを原則としたが,最近では内視鏡治療がover treatment,またinsufficient treatmentにならないよう,適応を厳格に考える機運が生まれている.それだけに大腸腫瘍の性状診断と深達度診断が重要であり,改めて内視鏡診断学の質が問われている.内視鏡治療に伴って発生する偶発症を予防・治療するための処置具の開発も目覚しく,より安全な治療が可能になるとともに,・適応の拡大にも貢献している.その結果,わが国では患者のQOLのうえからも,望ましい治療が行われていると評価できるが,それでも現状に満足することなく,更に良い手技の開発に努めなければならないことを強調した.
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―摘出ブタ胃および開腹下イヌ胃に対する照射―
林 琢也, 荒井 恒憲, 田尻 久雄, 黒木 雅彦, 下屋 正則, 青野 茂明, 小林 正彦, 永尾 重昭, 宮原 透, 日野 邦彦, 菊地 ...
1997 年 39 巻 10 号 p.
1753-1765
発行日: 1997/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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粘膜下層浸潤癌(sm癌)を含め早期胃癌のレーザー内視鏡治療をより合目的なものとするため,基礎的検討として濃度1mg/mlのインドシアニングリーン(ICG)溶液を摘出ブタ胃および麻酔開腹下のイヌ胃の粘膜下層に注入後高出力半導体レーザーを照射し,その蒸散能の検討を行った.本研究に用いた半導体レーザーの発振波長は805nmであり,ICGの吸収スペクトルのピークに一致する.このため半導体レーザー光は粘膜下層のICGに吸収され粘膜下層が効率よく蒸散された.また粘膜下層にICGが残存する間はレーザー光は固有筋層へ透過せず,固有筋層は傷害を受けないことが証明された.粘膜下層のICG残存の有無はICGの色調を指標にして肉眼的に判断できるため,蒸散深度の把握が可能であった.本法は粘膜下層まで浸潤をきたした癌を穿孔の危険なく治療可能であり今後実用可能な内視鏡治療手技として期待される.
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―イヌ胃に対する内視鏡下照射―
林 琢也, 荒井 恒憲, 日野 昌力, 田尻 久雄, 黒木 雅彦, 下屋 正則, 青野 茂昭, 小林 正彦, 永尾 重昭, 宮原 透, 増田 ...
1997 年 39 巻 10 号 p.
1766-1774
発行日: 1997/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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粘膜下層浸潤癌を含めた早期胃癌の内視鏡治療をより安全で確実なものとするために,われわれは胃粘膜下層にインドシアニングリーン(ICG)溶液を注入し,半導体レーザーを照射する方法の基礎的検討を行ってきた.本論文では麻酔下のイヌ胃に対し内視鏡下に本法を施行し,固有筋層傷害のない粘膜下層の蒸散が可能か否かを検討した.胃体部粘膜下層に1mg/mlのICG溶液を平均8m1注入し,レーザー照射を行った.25W,1秒の条件で同一箇所へ4~5回の繰り返し照射により粘膜層は蒸散除去された.粘膜下層露出後は蒸散表面の色調を観察しつつ照射することで固有筋層を傷害することなく粘膜下層深層まで蒸散が可能であった.照射6日後には照射部の潰瘍は治癒傾向にあることが内視鏡検査および組織学的検討により確認された.以上の結果より内視鏡下照射での本法の効果と安全性が確認でき,手術困難な早期胃癌を中心に臨床応用が可能と考えられた.
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徳毛 宏則, 小松 弘尚, 石田 邦夫, 森中 賢二, 伊藤 雅啓
1997 年 39 巻 10 号 p.
1775-1780
発行日: 1997/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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当施設では,胃粘膜腫瘍性病変の内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection, EMR)については,通常2チャンネル内視鏡法にて対応してきたが,切除困難な部位として,胃体部小彎,後壁側,胃角部および前庭部小彎が指摘されてきた.われわれはそれらに対する新たな対応法として,胃瘻下内視鏡的粘膜切除術(Transgastrostomal endoscopic mucosal resection, EG-EMR)を開発した.本法を施行された9例10病変について検討した結果,以下の結果を得た.完全切除率は有意に向上しまた切除切片は充分な大きさを得ることができた.出血穿孔等の合併症は認められなかった.本法は患者への負担も軽く,今後さまざまな応用が可能な有用な方法と考えられた.
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田村 智, 工藤 進英, 中嶋 孝司, 山野 泰穂, 浅野 道雄, 日下 尚志, 福岡 岳美, 今井 靖, 後藤 英世, 洗川 佐代子, 鈴 ...
1997 年 39 巻 10 号 p.
1781-1792
発行日: 1997/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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早期大腸癌1,019例(sm癌:248例)における内視鏡所見について,深達度診断における重要性を多変量解析にて検討した.sm癌での脈管侵襲はsm1bから認め,リンパ節転移はsm1cから認めた事より,内視鏡的治療の限界がsmlbまでと考えた.陥凹型早期癌におけるsm 1c以深の診断に影響度の強い因子は,IIa+IIc,11mm以上の腫瘍径,V
N型pit pattern,白斑,内視鏡的硬さ,空気変形(-),面状の辺縁不整,病変内隆起.隆起型早期癌では,有茎性でないこと,11mm以上の腫瘍径,V型pit pattern,白斑,緊満感,内視鏡的硬さ,茎の腫大.LSTでは結節混在型,非顆粒型,31mm以上の腫瘍径,V
N型pitpattern,白斑,内視鏡的硬さ,空気変形(-),ヒダ集中であった.以上の検討から,内視鏡的治療の適応となる早期癌は,90%以上の正診率で判定できることが分かった.
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菅内 文中, 山口 肇, 近藤 仁, 白尾 国昭, 小野 裕之, 岩淵 正広, 細川 浩一, 横田 敏弘, 斎藤 大三, 鈴木 誠司, 石川 ...
1997 年 39 巻 10 号 p.
1793-1798
発行日: 1997/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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症例は39歳女性.4年前に右乳癌に対し非定型的乳房切断術と術後化学療法を受けた.その2年後に肺及び肝転移巣も認めた.今回,嚥下困難をきたしたため精査となった食道造影及び内視鏡検査にて食道下部に乳癌の食道壁内転移による狭窄を認め,食道狭窄解除術として内視鏡的にSelf-expanding metal stent (EMS){Ultra-Flex}を留置した.術後食道の十分な拡張が得られ,合併症もなく症状は改善した.術後約4カ月後に肺転移巣による呼吸不全にて死亡した.
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永岡 栄, 板東 隆文, 豊島 宏, 磯山 徹, 喜島 健雄, 武村 民子, 倉 禎二
1997 年 39 巻 10 号 p.
1799-1804
発行日: 1997/10/20
公開日: 2011/05/09
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症例は46歳女性.胃内視鏡検査で胃体部に,中央に膀窩を伴う粘膜下腫瘍を認めたため,胃襖状切除を施行した.大きさ20×12×6mmの黄白色充実性の腫瘍であった.組織学的には,腫瘍細胞は好酸性の微細顆粒を含む豊富な細胞質を有し,その顆粒はPAS染色陽性であり,ジアスターゼにより消化されなかった.免疫組織染色ではS-100蛋白陽性所見を示し,電顕像では細胞質内に電子密度の高い顆粒状物質を認めた.強拡大10視野に3~5個の核分裂像および静脈侵襲を認めたため,悪性顆粒細胞腫と診断した.静脈侵襲を認めた顆粒細胞腫の報告は過去になく,貴重な症例として病理組織学的検討を詳細に加え報告した.
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小池 智幸, 斎藤 行世, 佐藤 勝久, 斎藤 道也, 小島 敏明, 大楽 尚弘, 山極 洋子, 大野 智之, 上野 孝治, 長瀬 慶一郎, ...
1997 年 39 巻 10 号 p.
1805-1811
発行日: 1997/10/20
公開日: 2011/05/09
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症例は49歳男性.1991年胃内視鏡検査で,胃角部大彎後壁側に中心に陥凹を伴う肥厚した皺襞を認め,生検でアミロイド沈着を確認した.他臓器にアミロイド沈着はなく限局性胃アミロイドーシスと診断し,経過観察とした.1993年再度の生検にて胃形質細胞腫を疑い,胃全摘術を施行した.病理組織学的検索にてIgA/κ型の形質細胞腫の粘膜下層までの増殖と,同部に一致するアミロイド沈着を認めた.形質細胞腫のアミロイド沈着との関与が示唆された.
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曹 一成, 小林 清典, 勝又 伴栄, 横山 薫, 高橋 裕之, 五十嵐 正広, 西元 寺克禮, 三富 弘之, 岡安 勲
1997 年 39 巻 10 号 p.
1812-1817
発行日: 1997/10/20
公開日: 2011/05/09
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症例は45歳,女性.注腸造影および大腸内視鏡所見で,盲腸に20×1.5cm大の巨大な有茎性ポリープを認めた.超音波内視鏡では,粘膜下層を主体とし,内部が等~低エコーの腫瘤として描出された.術前診断は困難であったが悪性所見に乏しく,内視鏡的に摘除した.病理組織学的には,粘膜下層を主体とするInflammatory fibroid polyp(IFP)であった.大腸のIFPは稀であり,自験例は腫瘍径が大きかったが,内視鏡的治療が可能であった.
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小林 正和, 植村 一幸, 坂戸 政彦, 宮原 秀仁, 川口 哲男, 加藤 邦隆, 清澤 研道
1997 年 39 巻 10 号 p.
1818-1822
発行日: 1997/10/20
公開日: 2011/05/09
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症例は63歳の女性,C型慢性肝炎の精査目的に入院.腹腔鏡検査では肝は陥凹の散在する斑紋肝であったが胆嚢では底部に直径約2cmの白色調の隆起を認めた.腹部波検査では,胆嚢は描出されなかったが,腹部CTでは,低吸収域を内包する腫瘤病変が認められた.ERCPでは胆嚢底部に中心に陥凹を伴う隆起性病変が認められた.胆嚢腺筋腫症が最礙われたが,CA19-9が軽度高値を呈していたため,胆嚢癌の合併を否定できず,胆嚢摘出術を実施した.摘出所見では,悪性所見は認めず限局型の胆嚢腺筋腫症であった本邦において,腹腔鏡検査にて発見された胆嚢腺筋腫症は報告例が少なく,貴重な症例と考え報告した.
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棚橋 俊仁, 児玉 正, 今村 陽一, 加藤 啓明, 佐藤 秀樹, 光藤 章二, 加嶋 敬, 新谷 弘幸, 吉波 尚美, 小笠原 宏行, 高 ...
1997 年 39 巻 10 号 p.
1823-1828
発行日: 1997/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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症例は77歳女性で,右季肋部痛,発熱,黄疸を主訴に受診した.各種画像検査で胆嚢と肝内胆管に一致した広範なガス像を認め気腫性胆嚢炎と診断した.保存療法で全身状態は改善したが,腫瘍の存在が完全には否定できず外科手術を施行し,胆嚢体部に結節浸潤型の低分化型管状腺癌を認めた.広範なガス像を呈した気腫性胆嚢炎を合併し,術前に胆嚢癌の診断が困難であった症例を経験したので,本邦報告例からの考察も加え報告する.
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鈴木 章彦, 長谷部 修, 武川 建二, 赤松 泰次, 藤森 芳史, 宮林 秀晴, 前島 信也, 古屋 直行, 清澤 研道, 古田 精市
1997 年 39 巻 10 号 p.
1829-1834
発行日: 1997/10/20
公開日: 2011/05/09
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症例は61歳女性.膵頭部に4×4cmの腫瘤を認め,ERCP上膵頭部主膵管の狭窄と膵内胆管の圧排所見を認めた.non-Hodgkin's lymphomaの診断で化学療法を施行後,腫瘍は縮小し,ERCP上膵管像の改善を認めた.化学療法による膵管像の変化を観察できた悪性リンパ腫の報告は少なく,興味ある症例と考え報告した.
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野田 昌夫, 児玉 正, 澤井 直樹, 渥美 正英, 上平 博司, 中島 誠, 棚橋 俊仁, 加嶋 敬
1997 年 39 巻 10 号 p.
1835-1839
発行日: 1997/10/20
公開日: 2011/05/09
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胃後壁病変や胃上部病変など切除困難部位に対する治療法として,半筒型透明フード(Partial transparen thood)を用いた内視鏡的粘膜切除術を考案,開発した.基本となるフードは,2チャンネルスコープ(GIF-2 T 200)に脱着できるものを用い,1/3周径および1/4周径のものを作製した.切除方法としては,同フードをスコープの右側に装着,胃内に挿入し,病変の口側を軽く圧迫することにより病変を正面視した後,従来の内視鏡的粘膜切除法によって症変を把持牽引,絞扼切除した.胃後壁病変5例に対して施行した結果,切除粘膜径は,平均で26±9mmと,従来の方法に比して約6mm大きく切除できた.この切除法では,後壁病変を正面視することで,病変の的確な観察と垂直方向に近い病変の把持,牽引が可能であり,比較的大きな病変に対しても一括切除が可能であった.本法は胃後壁病変に対する粘膜切除方法として,極めて有用な手段であると考えられた.
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1997 年 39 巻 10 号 p.
1840-1841
発行日: 1997/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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1997 年 39 巻 10 号 p.
1842-1843
発行日: 1997/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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