2018 年 15 巻 1 号 p. 7-14
術前化学療法が大腸癌肝転移の術後感染性合併症(postoperative infectious complication:以下,PIC)に与える影響を検討した。2011年 4月から 2015年 12月までに肝切除を行った原発巣同時切除例を除く大腸癌肝転移 152例を,術前化学療法施行 105例(以下,PC群)と非施行 47例(以下,NPC群)に分け周術期因子を後方視的に比較した。PC群は NPC群に比べ,術前低栄養状態に加え肝切除範囲や手術時間,出血量からみた手術侵襲度が高度であり,PICの頻度が高率であった(32% vs. 15%, P<0.05)。多変量解析で術前化学療法は糖尿病,非癌部類洞拡張grade,胆汁瘻とならぶ PICの危険因子であり,とくに化学療法期間 16週以上で PICのリスクが高まることが示唆された。したがって,術後 PIC予防の点からは術前化学療法期間は短いほうが望ましく,治療期間が長期化した症例では術後管理に十分留意することが必要と考えられた。