2019 年 16 巻 2 号 p. 112-117
近年,膵癌術前治療が増加している。教室の膵頭部癌に対する周術期対策の変遷ならびに手術先行治療と術前治療の周術期合併症を後方視的に検討した。2008年~ 2018年の膵頭部癌連続 184例では,手術先行治療が 94例,術前治療が 90例で,最近 5年間では72.3%に術前治療が施行された。術前治療群は,年齢が低く,喫煙率が高く,術前 Hbが低く,血小板リンパ球比が高値で,手術時間が長く,輸血施行例と門脈合併切除例が多かった。術後合併症頻度はSSIを含め差はなく,Clavien-Dindo Ⅳaが有意に術前治療群で多かった(0.0% vs 5.5%,P=0.02)。全 184例を SSIあり群と SSIなし群に分け,リスク因子を検討すると,年齢 .68歳,手術時間 .548分,BMI .21.5,ALB<3.5g/dLが独立したリスク因子であった。術前治療は,膵頭十二指腸切除の SSIリスク因子とはならなかった。