日本プライマリ・ケア連合学会誌
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総説
高齢者の睡眠薬による健康影響に関するレビュー
─その適正使用のためのエビデンス─
星野 智祥
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2015 年 38 巻 3 号 p. 228-242

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抄録

高齢になるにつれ不眠症の有病率は高くなることが知られている. しかし, 不眠症治療の主要な対象となりうる高齢者は薬理学的にその副作用を被りやすいと考えられるが, 忙しい現在の診療システムの中では, その有益性とリスクについて十分な説明がないまま薬物治療が安易に導入されやすい傾向にある. そこで, 我々はベンゾジアゼピンを中心とする睡眠薬が高齢者の健康にどのような影響を与えるのかPubMed検索で調査を行い, リスクや有益性という観点から現在のエビデンスを示し, 睡眠薬の適正使用に貢献したいと考えた. その結果, 高齢者に対する睡眠薬の使用は認知症の発症や, 転倒による骨折や外傷のリスクを増加させる可能性があることが示された. さらに, 短期的な使用では睡眠の質改善効果は期待できるものの効用は小さく, 長期的な使用ではその有益性に十分なエビデンスがないことが示された. 今後, 睡眠薬の使用は短期的な効用を期待するだけでなく, そのリスクを勘案して適正使用していく必要がある.

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© 2015 一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
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