2025 年 48 巻 2 号 p. 44-49
医療において健康の社会的決定要因(以下,SDH)に介入することの重要性は広く知られているが,患者に心理的能力の欠如および行動障害がある場合,事態が困難となる可能性がある.本稿では,生活扶助を受け,多疾患併存状態であった80代の女性の症例を取り上げる.訪問診療導入後に,電気代未払いによる停電のため,必要な治療ができず病状が悪化した.加えて,福祉事務所担当者などの支援者との関係性を悪化させたため,担当医として関係者を集めて話し合い,患者の心理・行動面の課題を評価して,障害されている能力の補完となる家計管理支援を行った.その結果,6か月で電気代の未払金の支払いを完了し,患者の自覚的症状の改善が得られた.今回,経済的困窮だけなく,社会資源との関係破綻というSDHが重なり,介入が難しくなっていた患者に対して,医療従事者が心理・行動面に着目して関わったことで,健康状態が改善した症例を経験した.