琉球方言の一つで多様な方言差を持つ奄美喜界島の中南部諸方言について,その主要なアクセントタイプを6つ取り上げ,名詞アクセントの体系と仕組みを記述する。まず,湾方言が二型アクセントで,一系列は文節単位で決まる語声調,一系列は文節単位ながら単語単位で指定される昇り核を有するもので,語声調と核が併存している体系であること,両系列ともモーラ単位を基本としながら撥音は特別で,語声調の形は担うのに昇り核は担えず,両系列の質的違いを示していること等を述べる。無核型と語声調との関係も考察する。次に,湾方言の体系と比べつつ,坂嶺,上嘉鉄,荒木,中里,伊実久の各方言の違いを明らかにする。最後に,伊実久方言がこれらの祖体系に当たると位置付けて,上記諸方言のアクセント史を素描する。