言語研究
Online ISSN : 2185-6710
Print ISSN : 0024-3914
特集 類別詞の多様性
ハイダ語の類別接頭辞について
堀 博文
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2022 年 162 巻 p. 1-23

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抄録

カナダ北西海岸地域とアメリカ合衆国アラスカ州南東部で話されるハイダ語には,動詞に付加されて自動詞節の主語や他動詞節の目的語となる名詞句の指示対象がどのような意味範疇に属するかを示す類別接頭辞がある。ハイダ語の類別接頭辞の用法は,文脈への依存度の違いによって,静的なそれと動的なそれに分けられる。前者は,文脈に関係なく,一定の名詞句と固定的に結びつき,典型的な名詞類別の機能を果たす。一方,後者は,文脈に応じて両者の結びつきが可変的であり,それゆえに指示対象を細分化して表わせる。更に,ハイダ語の類別接頭辞には,名詞句の意味範疇を示さずに,動詞をいわば内側から修飾するような機能もある。このように,ハイダ語の類別接頭辞は,名詞類別にとどまらず,幅広い機能を有する点が特徴的であるといえる。

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© 2022 日本言語学会, 著者
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