抄録
衝撃は宇宙空間では極めて普遍的な現象である。またマーチソン隕石は炭素質コンドライトの1つであり、太陽系初期の情報を保持した物質であると考えられている。よって、マーチソン隕石を用いた衝撃実験を行うことは、太陽系物質の進化を知る上で大変意義深い。Tyburczy et al. (2001)は、衝撃によるマーチソン隕石から水素と炭素の脱ガス、及びそれに伴うそれぞれの元素の同位体比変化を確認しているが、この実験では衝撃圧力範囲の幅が狭く(30.5-38.6 GPa)、実際の隕石が経験してきた衝撃反応について議論するには充分ではない。そこで本研究では、より幅広い圧力範囲(6-37 GPa)での衝撃実験を行った。また、マーチソン隕石の水素と炭素を供給している代表的な物質を用いた衝撃実験も同時に行い、それら供給源物質が隕石の脱ガス時にどのように寄与しているかを考察した。