抄録
水田は温室効果気体であるメタンの大きな人為的発生源である。水田からの発生は土壌中が還元的で有機物量が多いほど増大する。近年、冬期湛水水田が注目されているが、冬期湛水によりメタン発生量を増大させると考えられる。しかしメタン放出の定量化は進んでおらず、そのため本研究では冬期湛水水田から放出されるメタンの定量的な観測を行った。場所は2008年7月から10月にラムサール条約登録湿地である宮島沼に隣接する冬期湛水水田(実際には早期湛水・有機栽培水田)と慣行の無機栽培水田(以下、慣行田)を用いて観測を行った。結果は冬期湛水水田の大気中メタン濃度は湛水時に慣行田よりも一桁ほど高い値が観測された。冬期湛水水田では高いメタン濃度が測定されたため、温室効果への寄与は慣行田よりも大きいことが定量的に判明した。水鳥の生息地確保の利点に加え、温室効果への寄与も考慮にいれた冬期湛水水田の活用が期待される。