抄録
1970年代以降、アポロ、ルナ計画によって持ち帰られた試料により月の理解は飛躍的に向上した。しかし、隕石等の衝突によって破砕変形を受けた角礫岩化した試料の年代測定は、これまで困難とされてきた。KREEP、カコウ岩(GNT)、Very-Low-Ti(VLT)玄武岩クラストが含まれていることが報告されているアポロ17号計画によって採取されたポリミクト角礫岩中のリン酸塩鉱物に着目し(Ryder et al., 1975)、高感度高分解イオンマイクロプローブ(SHRIMP)による局所年代分析を行った。
VLT玄武岩起源、KREEP起源、GNT起源のリン酸塩鉱物を特定し、それぞれ3.963±0.11Ga、3.919±0.055Ga、3.906±0.02Gaの形成年代が得られた(誤差;2σレベル)。KREEP、GNTの結果はこれまでアポロ、ルナ計画によって持ち帰られた試料によって報告された年代と調和的である。一方本研究で得られたVLT年代3.963±0.11Gaはこれまでのアポロ、ルナ試料中のVLTの報告年代よりも0.6Gaほど古く、VLT玄武岩の火成活動が約11億年(4.0~2.9Ga)継続していたことを示唆する。