主催: 日本地球化学会年会要旨集
日本海側においては、総降下物に含まれる非海塩性硫酸イオンの硫黄安定同位体比は冬季に高く夏季に低くなり、主に冬季に中国北部から酸性物質が輸送されていると報告されてきた。しかし沖縄県西表島においては、日本海側とは異なった硫黄安定同位体比の季節変化がみられた。後方流跡線解析の結果、西表島は中国大陸から約200 km、日本本土から1000 kmという位置にあるため、中国北部だけでなく南部からも酸性物質が輸送されていることが明らかになった。さらに、台風が接近する際の強風によって酸性物質が中国南部から輸送されることも分かった。おもにケイ質砂岩からなる西表島の土壌酸緩衝能は低く、年間を通して輸送される酸性物質による土壌酸性化が懸念される。