抄録
地下水中で過飽和に存在するカルサイトなどの炭酸塩鉱物は、深刻な地下水汚染を引き起こすヒ素 (As)を地下水中で固定化する効果が期待されている。しかしこの固定化機構には価数依存性があり、その分配挙動を化学状態に基づき評価する必要がある。本研究では、実際に地下環境で生成したカルサイトと共存する地下水の固液両相中に含まれるヒ素の化学状態分析を行い、天然でのカルサイトへのヒ素の分配挙動を調べた結果について報告する。還元的な地下環境でヒ素は三価の亜ヒ酸が支配的に存在していたにも関わらず、カルサイト中には五価のヒ酸が保持されていた。これは室内実験の結果とも一致し、カルサイトが還元的な地下水においてもヒ素の固定相としての機能することを示す結果である。