抄録
表層岩石中の宇宙線照射生成核種(TCN)生成量から、地表面の侵食速度を定量的に算出することが可能である。この手法は乾燥地域における気候学・地形学に盛んに応用されるようになってきた。一方、一般に湿潤地域では、侵食速度が大きく岩石中のTCN濃度が小さいため、表層試料のみでは侵食速度の評価が困難である。そこで湿潤地域では表層だけでなく深度が異なる複数試料を採取することにより、侵食速度の評価が行われている。本研究は湿潤地域の侵食速度の定量的評価と侵食速度の制御要因としての気候の影響を評価することを目的とし、日本の花崗岩地域(佐賀)のTCN深度プロファイルを求めた。核種蓄積のモデリングを行ったところ、佐賀において氷期-間氷期変動に伴い侵食速度が変化していたことが明らかとなった。これは海水準変動を通じた対馬暖流の変動が、陸域気候変動を通じて侵食速度に影響を与えていた可能性を示唆している。