抄録
我々は、広島県の幻洞窟で、18kaから4.5kaの期間に成長した石筍の希土類元素パターンを調べ、その古環境指標としての可能性を検証した。幻洞窟の周辺地質は、主に石灰岩と安山岩から成る。石筍の希土類元素濃度は、石灰岩の濃度で規格化した。この結果、石筍のほとんどの希土類元素パターンに、重希土類元素の濃集が認められた。これは、母岩の溶解過程において、重希土類元素が軽希土類元素に比べて、液相側に溶出しやすいためであると考えられる。元素の液相-固相間での分配は、結晶成長速度にも支配される。実際、重希土類元素の濃集の程度は、石筍の成長速度と対応して変化する傾向を示した。また、石灰岩で規格化した石筍の希土類元素パターンは、Euの正の異常を示した。これは、雨水によって風化した安山岩の一部が溶出し、斜長石などに特有のEu異常が石筍の希土類パターンに反映されたものと考えられる。