抄録
弥生時代から古墳時代からの朱については、今津・南 2006によれば、前方後円墳発生を契機として、 巨視的には、中国産朱から国産朱へ転換するという流れが伺われたが、時期的に即した研究については今後の課題とされてきた。 本研究では実際の測定データに即して朱の移行過程を明らかにし、歴史的に位置付け解釈を加えることを目的とした。 結果、弥生時代終末期から古墳時代初頭にかけては、中国産朱と国産朱とが共存する状態にあり、古墳時代前期から古墳時代中期には国産朱が主体となることが明らかになった。この過程は、畿内勢力が主導した前方後円墳で展開した古墳祭祀の波及と軌を一にしており、朱も他の副葬品と同様に流通が管理され全国的に波及した可能性が高い。 今後の課題として、詳細な産地の推定は別の要素を加えて分析をしなければならないが、この結果は対外交易の推移を明らかにする要素のひとつとして今後も評価されるべきであろう。