抄録
古代には金属器の鋳なおし利用が広く行われていたという説があり同位体比を用いた産地決定の障害となる可能性がある.本研究では中国産の青銅器試料について揮発性の高いSn同位体を用いてリサイクルの検証が可能か評価した.このため,日本,中国などのアジア地域で産出する錫石(cassiterite)の同位体比も分析した.本研究ではすべて質量に依存する同位体比変動が観察された. 日本の7鉱山からの錫石の124Sn/120Sn同位体比の変動は0.4‰だった.中国産の錫石の同位体比は0.7‰だった.一方で,中国出土の商時代の青銅製品について行われた分析では,試料の間で0.4‰の変動が見られた.また,同じ地域で出土したスラグは青銅器よりより軽い同位体比を示した. 今回の結果からは青銅器のスズ同位体比の変動は錫石のそれと同程度であり,リサイクルの検証への適用は難しい可能性が示唆された.