抄録
月表層のレゴリスに微小隕石が衝突すると、複数のレゴリス粒子の一部または全部が融解して固結する事により、アグルチネートが形成される。このアグルチネートには急冷されて出来た非晶質物質が存在する。本研究ではその非晶質部分でU-Pb同位体分析を行い年代情報の読みとりを試みた。
アポロ15号が持ち帰ったレゴリス試料のうち15001と15005に含まれるアグルチネートの非晶質部分において、高感度高分解能イオンマイクロプローブを用いてU-Pb年代測定を行い、非放射壊変起源のPbの補正のためにU-total Pbアイソクロン法を利用した。
コンコーディアラインとディスコーディアラインの上部接点からはレゴリス粒子の原岩の年代、下部接点からは衝突の年代が得られる。結果の一例として、上部接点からは4578±810Ma、下部接点からは224±520Maが得られた。従って異なる月レゴリス試料においても本法を用いることで年代情報を得られると思われる。