抄録
鉄は多くの生物にとって必須元素であるが、鉄が生体内でどのように吸収・代謝されているのかは不明な点が多く、また海洋表層の鉄存在量も少ない(<10-7 wt%)ため、生体間での鉄循環(鉄バイオサイクル)に関しても制約条件は限定的である。陸上動物では、身体の部位ごとに鉄安定同位体比(δ56Fe/54Fe)の値が異なることが報告されている(Hotz et al., 2011; Walczyk and Blankenburg, 2005)が、海洋生物においては、鉄同位体比に関する報告例はマグロの筋肉の鉄同位体比に限られており(Walczyk and Blankenburg, 2002)生体内での鉄代謝に関して十分に議論できないため、本研究ではマグロ類に注目をし、海洋生物の鉄代謝や鉄のバイオサイクルに関する新たな知見を引き出す試みを行った。