抄録
低分子ジカルボン酸の中のシュウ酸は有機エアロゾルの主成分の一つであり、これは水溶性が高いことから雲や雨の凝結核となりやすく、地球の放射収支や水循環に影響を及ぼす。本研究は、森林植生から放出されたテルペン類由来のシュウ酸エアロゾルを生成する環境要因を明らかにするため、2012年7月に富士北麓カラマツ林の樹冠直下でテルペン類濃度、シュウ酸濃度、O3濃度、イソプレンとα-ピネンSOAトレーサー濃度を同時に測定した
イソプレン濃度、シュウ酸濃度、イソプレンとα-ピネンSOAトレーサー濃度は日中に高くなった。シュウ酸濃度はO3濃度、イソプレンとα-ピネンSOAトレーサー濃度と有意な正相関があった。これらの結果より、テルペン類からシュウ酸の生成はサンプリング時間(3時間)内で速やかに進行していることが観測より示唆された。さらに、シュウ酸濃度は硫酸イオン濃度と有意な正の相関があり、テルペン類の酸化によるシュウ酸生成過程においてエアロゾル酸性度の関与が示唆された。