初期の火星表層環境の解明を目標として研究を行った。先行研究により炭酸塩、シリカ脈の形成時に火星表層由来の物質の混入が示唆されていることから、混入物質の推定を目標として火星隕石 ALH 84001 の炭酸塩の化学種分析を行った。Fe K 吸収端 (7111 eV)における X 線吸収微細構造 (XAFS) 分析を行い、Pre-edge解析による価数分析と、広域XAFS (EXAFS) 分析を行った。その結果、Pre-edge分析による鉄の平均価数は2価を超えていた。この事実は、三価の鉄を含む鉱物が炭酸塩粒子中に存在することを示唆する。また、混入物質の候補として緑泥石の存在が示唆された。このことはPre-edge解析の結果、火星探査研究と調和的である。緑泥石がALH 84001 の炭酸塩の混入物質として存在していれば、少なくとも炭酸塩の形成年代以前から緑泥石が形成されるような地質学的プロセスが存在したと考えられる。この結果は、火星での熱水作用の存在を支持していると考えられる。