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初期太陽系におけるユークライト母天体の火成活動に関する年代を制約するため、変成の影響を受けにくいSm–Nd放射壊変系に着目した。本研究で用いる玄武岩質ユークライトNWA 7188は天体衝突による角礫化の程度が低く、母天体形成初期の地殻情報を保持する重要な隕石であると考えられる。NWA 7188の酸素同位体測定の結果、Δ17 Oの値はユークライトフラクショネーションラインと一致した。また、ICP-MSを用いた元素分析から、NWA 7188は稀なStannern trendグループに分類されることが明らかになった。さらに、得られたSm–Nd年代(4553 +17/–20 Ma)は、先行研究による玄武岩質ユークライトのSm–Nd年代の中で非常に古く、玄武岩質ユークライトに含まれるジルコンのPb–Pb年代と誤差の範囲で一致している。従って、NWA 7188のSm–Nd年代は、母天体での火成活動の年代または地殻形成初期の広域にわたる熱変成の年代に対応すると考えられる。