本研究では、C3植物としてアシ、またC4植物としてススキの草本類を試料として、これらを構成する有機物(リグニンフェノール、脂肪酸、クチン酸など)と炭素安定同位体比の変化を自然環境中において追跡することを目的とした。変化過程を追跡しやすくするためには、できるだけ単純な植生の場を選択することが重要と考えられたことから、C3草本植物として神奈川県芦ノ湖の湖尻水門のアシを、またC4草本植物として神奈川県箱根仙石原のススキを選択し、それぞれの場にて生葉、落葉、土壌、河川水などを試料として採取し分析を行った。特に芦ノ湖のアシの場合には、生葉、落葉の炭素安定同位体比は土壌中の同位体比(アシの場合には付近の河川水中有機物も含めて)によく反映していること、またリグニンなどの有機物組成は一定の方向に変化していることを示していた。