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海洋における微量元素は様々な物質循環過程を鋭敏に反映した鉛直分布を示し,物質循環の解明に極めて有用である。超微量元素であるビスマス(Bi)は海洋における滞留時間が20年程度(Lee et al., 1985/1986)と短いため,比較的短い時間スケールで起こる海洋物質循環の重要なトレーサーとして期待できる。しかし,外洋海水中Bi濃度は極めて低く精確に定量することが困難であり,世界的に報告数が乏しい。そこで,本研究では,既に確立済みの分析手法(Norisuye & Sohrin, 2012)を用いて,白鳳丸KH-14-6次航海,KH-11-7次航海および新青丸KS-13-T3次航海で観測した西部太平洋における溶存態Biの濃度分布を解明することを目的とした。西部北太平洋の測点では北太平洋亜熱帯モード水(NPSTMW)の亜表層において顕著な濃度極大を示した。南半球の測点における各層のBi濃度は,北半球の測点と比べて低いことが分かった。南半球のデータは本研究が初である。