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国の委託事業の一環として、1984年から継続してきた全国の原子力発電所前面海域における放射能調査の結果をもとに、全国の海水中Cs-137濃度の変遷、および東京電力福島第一原発事故後に日本海側で見られた海水中Cs-137の濃度変化について検討した。日本海側では、北太平洋側に比べてわずかではあるが、事故直後は大気由来によって、一部の海水でCs-137濃度が上昇したものの、2012年には事故前のレベルに戻った。しかし、2013~2016年にかけて日本海側の海水中Cs-137濃度はわずかに上昇した。これは日本海で検出された海水中Cs-134濃度変化と一致していることから、北太平洋へ流出した同原発由来の放射性Csの一部が、海流に乗って日本海側に到達したと考えられる。ただし、その量は同原発から北太平洋へ流出したCs-137量(19−24ペタベクレル)の0.2%程度であった。