硫酸還元菌(SRP)は地球規模での硫黄および炭素循環において重要な役割を果たしている。海洋性SRPは沿岸域の堆積物をはじめとする嫌気環境に普遍的に分布し、古くから研究されている。近年の機能遺伝子の多様性解析や環境メタゲノム解析の結果から、深海熱水域のような地球化学的に特異な環境においても、多様なSRPの存在が明らかとなった。しかしこれまで深海熱水域からのSRP分離例は極めて少なく、その性状の多くは未解明である。よって本研究では、温度や酸化還元状態を含む現場環境特有の条件を加味した培養により、深海熱水域から新規SRPを分離し、その性状の解明を目的とした。2019年の海洋研究開発機構の調査航海で、伊豆・小笠原弧水曜海山において採取したチムニーサンプルから、限界希釈法を用いて常温性新規SRPを計2株分離した。両者は絶対嫌気性の化学合成細菌で、既知種の16S rRNA遺伝子との相同性が95%以下であることや、生理・化学分類学的分析結果から、各々を新属として提唱予定である。