河川生態系では、魚類排泄物が栄養塩を供給することで一次生産性を高める。移動性の大きい魚類は、生態系内外での物質・栄養塩輸送を行うことで、生態系の構造や機能に大きく影響を与えていると考えられるが、魚類による栄養塩輸送の効果を定量的にとらえた研究は少ない。琵琶湖流入河川では夏季になると、琵琶湖回遊魚であるハスの大規模な遡上が見られ、湖から河川への物質・栄養塩輸送を担っていると考えられる。そこで本研究では、琵琶湖流入河川の栄養塩動態におけるハス排泄物の寄与率を評価した。その結果、ハス排泄物は河川全体の栄養塩付加量のうち最大10%を占めることが明らかとなった。
