ステロイドはほぼ全ての真核生物がもつ特徴的な形質の一つであるが、近年のゲノム解析によりこれまで知られていたよりも多くのバクテリアがステロイド合成経路をもつことが示唆されている。本講演では真核生物のステロイド合成経路はバクテリア由来の可能性が高いことを示す。またバクテリアのステロイド合成経路は真核生物がもつ合成経路よりも古い形質を残していると推測される。バクテリアおよび真核生物におけるステロイド合成経路は複数の発展段階をたどっており、24億年前の大酸化イベント後の地球環境に順次適応していった過程であると考えられる。ステロイドは真核生物がミトコンドリアを獲得して現在知られる真核生物の形に到達する過程において重要な役割を果たしたと考えられる。さらにステロイドはこれまで真核生物固有のバイオマーカーとして利用されてきたが、バクテリアのステロイド合成が与える影響についても考察する。