日本の中世には国内で青銅原料を採掘する十分な技術がなかったため、中国から大量に輸入していた北宋銭を原料とし、鋳直して青銅製品を作っていたという説がある。一方、そのままで通貨になっていたものを、わざわざ鋳つぶして他の製品に作りかえる必要はなかったのではないかという疑問の声もあがっていた。これを検証するため、当時日本では流通していなかった北宋銭の大銭の中から、特に良質なものを選び、鉛同位体比分析を行って、既報の経筒のデータと比較した。大銭を選んだのは、現在国内に残っているいわゆる一文銭には、後世に作られた模鋳銭がきわめて多く、真贋を見極めるのが困難なためである。分析の結果、既報の経筒が比較的まとまった数値範囲内にあるのに対し、大銭は大きなばらつきをみせた。このことから、北宋銭が原料になっているとは考えにくいことがわかった。