ハロゲン(F、Cl、Br、I)は揮発性、液相濃集性が高いため、海洋、堆積物、地殻などの表層のリザーバーに高濃度で存在し、その元素比もリザーバーごとで大きく異なることから、地球表層-マントル間での物質循環、とくに水循環のよいトレーサーになると期待される。マントル物質中のハロゲンはその低い濃度から従来の手法では分析が困難であったが、近年、原子炉内で試料に中性子を照射し、核反応によりハロゲンを希ガス同位体に変換し、その希ガス同位体を高感度希ガス質量分析により定量する手法によって高感度分析が可能になり、それを用いて得られた中央海嶺やホットスポットの玄武岩ガラス、マントルかんらん岩やダイヤモンド、蛇紋岩のハロゲン組成を指標として水を主とした揮発性成分の、地球内部での物質循環が明らかになりつつある。本講演では主に、かんらん岩と蛇紋岩のハロゲン組成から示唆されるマントル中の揮発性成分循環について紹介する。