本研究では、鉄・マンガン(水)酸化物に吸着させたV試料を標準物質として、海底マンガン酸化物のV K吸収端XANESスペクトルのプリエッジ解析により、海底マンガン酸化物中のVの四面体(Td)および八面体(Oh)吸着構造の割合(Oh/Td比)を推定した。さらに、量子化学計算で見積もられたTdおよびOh吸着構造に対する同位体分別の大きさを用いて、海底マンガン酸化物中のVの同位体分別を見積もった。先行研究において実験によってVの同位体分別が見積もられている起源の異なる2種類のマンガンノジュール標準試料について、本手法により同位体分別の見積もりを行った。XANESプリエッジ解析から、2つの標準試料はOh/Td比は異なっており、その起源の違いを反映していることが示唆された。また、Oh/Td比に基づいて量子化学計算を用いて見積もられた同位体分別は、ともに実験値とよい一致が得られた。本手法により、海底マンガン酸化物中のVの同位体分別を予測できることが示唆された。