2020 年 8 巻 1 号 p. 16-
重要な要点
・ CT装置における寝台と延長天板との接続部分(接続部)は補強のため高いX線吸収体を有している.
・ 頭部CT検査におけるautomatic tube current modulation (ATCM)は画質と撮影線量の最適化ができる有効なテクニックだが高いX線吸収体を有している接続部上では画質が低下し,水晶体の被ばくが増加する.
・ 寝台上で頭部CT検査を行う場合,接続部上での頭部CTを避けることにより,画質低下,水晶体の被ばくが低減できる.
【目的】頭部CT検査は再現性の向上,頭部の固定を目的として専用の固定具を用いるが,患者状態によっては寝台上で撮影を行うことがある.寝台上で撮影する場合,寝台と延長天板との接続部分(接続部)はCT位置決め画像で明らかなX線高吸収体として投影される.過去の報告で寝台やバックボードが画質,線量に与える影響は報告されているが,この接続部に着目した報告は少ない.本研究の目的は接続部上で頭部CTを撮影した場合の画質と水晶体の被ばくについて検討することである.【方法】SOMATOM Definition AS+を用いて寝台,接続部にそれぞれ頭部ファントム(京都科学社)を 配置し,固定管電流, automatic tube current modulation (ATCM) で5回撮影した.画質評価として頭蓋内のCT値のstandard deviation (SD) を計測した.ATCMの動作を評価するため,取得した画像のDICOMタグより管電流を取得した.水晶体の被ばくを推定するため眼窩表面に0.6 cc ion chamber(Radcal社) を眼窩表面に配置し吸収線量の測定を行った.統計解析にはstudent’s t-testを使用した.
【結果】固定管電流でのCT値のSDは寝台,接続部で3.14 ± 0.08 HU,3.78 ± 0.08 HU,ATCMでのSDは寝台,接続部で3.18 ± 0.11,3.52 ± 0.08 HUであった.(p<0.01),ATCMでの管電流は寝台で225 mA,接続部で295 mAで31%増加した.水晶体の吸収線量は固定管電流で寝台,接続部で59.61 ± 0.30 mGy,59.39 ± 0.06 mGy (p=0.19),ATCMでは寝台,接続部で51.90 ± 0.19 HU,69.28 ± 0.31 mGy で34 %増加した. (p<0.01)【結語】接続部上での頭部CT検査は画質が低下し,水晶体の被ばくが増加する.