抄録
多変量データ間の関係をモデル化する場合, 通常は確率論に基づいた線形回帰分析が用いられる.これに対し, 線形システムの係数をファジィ数として表すファジィ線形回帰分析が提唱されている.この手法は, ファジィ回帰係数から入力データと出力データとの線形関係のあいまい性が推測できる, およびモデルによる推定値は幅をもち, その幅は入力データごとに異なる, という特徴をもつ.
本研究では, これらの特徴を利用する例として, 多変量回帰モデルとコンターリングのファジィ化を試みた.ファジィ多変量回帰モデルは, 熊本平野の降水量と4つの観測井における地下水位との関係に適用し, 相関の強さを評価するとともに地下水位の変動モデルを作成した.一方, 母体の異なるデータが混在する場合の補間法として, ファジィコンターリングを定式化した.これを砂礫と粘性土が混在するモデル地盤のN値の補間に応用したところ, 異なる土質の境界付近で推定幅が大きくなることが確かめられた.