抄録
北海道の中軸部に分布する日高帯の南部地域には,変成岩類と深成岩類が広く分布し,日高変成帯主帯と定義されている.主帯には,角閃岩相~グラニュライト相の変成作用を被った角閃岩類(主帯角閃岩類)が分布する.一方,日高帯北部地域は,主に堆積岩類から構成され,しばしば緑色岩類(北部日高帯緑色岩類)を含む.本論では,同位体組成を含む全岩化学組成を基に,主帯角閃岩類の原岩を推定し,北部日高帯緑色岩類と比較した.主帯角閃岩類は,主成分・微量・希土類元素組成およびNd同位体比初生値から,北部日高帯緑色岩類は主成分元素および微量元素組成からN-MORB起源であると考えられる.両者のSr同位体初生値は,同位体的相互作用の影響を受け一般的なMORB組成よりも高いが,両者の間で調和的な値を示す.したがって,主帯角閃岩類と北部日高帯緑色岩類の原岩は,N-MORB起源の同一の火成作用によって形成された可能性が高い.